
是枝裕和監督や西川美和監督の監督助手を務めてきた、映像制作集団分福の新鋭【 孫 明雅(そん みょんあ)】監督の長編デビュー作、映画『トロフィー』が2026年7月10日(金)ついに全国公開となった。(K2 Pictures製作、分福企画)
本作が長編映画初監督作品となった在日コリアン3世の孫 明雅監督は朝鮮学校に通っていた自身の経験と感情を起点に、いまの時代を生きる在日コリアン、そしてその家族の中での葛藤を、みずみずしく、繊細な筆致で描き出した。
K-POPアイドルのライブにいくために14歳のソヒが売ったのは
父が大切にしていた、祖国・北朝鮮の勲章だった——
今や日本において完全に市民権を得た「推し活」は楽しく充実した時間を過ごすことができる一方で、チケット代やグッズ代などに出費が嵩むのも事実。 特に若年層にとって、推し活資金を確保するのはなかなか難しい。 「推し活」という言葉が普通に語られるようになった今、大好きな推しに会うためにコンサートへ行きたいという可愛らしい願いから、父親の大切なものを黙って売ってしまう…. 決して許される行為ではないが、まだ幼いソヒの気持ちに共感できた方もいるのではないだろうか? 本作は家族の大切さや社会が抱える様々な問題について改めて考えるきっかけを与えてくれる。
7月11日(土)、テアトル新宿にて公開記念舞台挨拶が行われ、ソヒ役を演じ本作にて映画初主演を果たした恒那(はんな)、そして朝鮮学校長でソヒの父親でもあるサンジュ役の 井浦新、母親・ミリョン役の 市川実和子、朝鮮舞踏を教える先生役の ちすん、孫 明雅監督の5名が登壇し、作品についての想いや撮影秘話などを語った。
映画鑑賞直後に行われた舞台挨拶。
5名が会場に姿を見せると、感動の気持ちがこめられた温かく大きな拍手が沸き起こった。 最初に登壇者ひとりずつ、鑑賞および来場への感謝を伝えると、映画についてのトークがスタートした。
朝鮮学校や朝鮮舞踊を題材としようと思ったきっかけ
孫明雅監督 :私自身、小学校から高校まで朝鮮学校に通いました。朝鮮舞踊部ではありませんでしたが朝鮮舞踊にはすごく憧れがありました。韓流ブームとなり、今ではK-POPアイドルを目指す日本の方もいらっしゃる反面、北朝鮮のミサイル発射に関するニュースの背景に朝鮮舞踊が使われているのを目にし、もともとは同じ国だったのに北と南の政治的な対立によって本来美しいものである朝鮮舞踊が違う目線で扱われることに疑問を感じ、朝鮮舞踊とK-POPを1つの映画の中で扱ってみました。

250名を超える応募の中から選ばれ、朝鮮舞踊未経験ながら主人公・ソヒ役を演じることになったことについて
恒那 :ソヒは自分と性格的な面で似ている部分が多く、個人的に演じやすい役だと思っていたのですが、舞踊がちょっと…(笑)。最初の段階ではポジションの中で一番下手で代役を使おうかとか、整体に行けとか(笑)、本当にいろいろ言われるくらいひどかったのですが、練習を始めて半年目ぐらいから舞踊部員の子たちと一緒にレッスンを受けられるようになり、そこからだんだん踊ることが楽しくなってきて、最後は舞踊が終わるのが寂しいと思うぐらい楽しく踊り切ることができました。
監督が恒那をソヒ役に選んだ理由
孫明雅監督 :3次までオーディションがありましたが、1次の面接でなんとなく「この子がいいな」って思って、2次の演技を見て「この子がいい!」って思ったんですが、3次の踊りのオーディションで…「えーっと…」でした…(笑) 。その 3次オーディションの様子は『トロフィー』のインスタグラムアカウントで舞踊のビハインドとして見ることができるので、すごく可愛いので見てみてください(笑)
市川実和子 :最後の舞踊をやるシーンの撮影の時、監督から「見てください。これ!」って最初の頃の映像を見せてもらって(笑) すごく可愛かったです(笑)
と、監督や母親役の市川実和子も恒那の大きな成長に目を細めた。
恒那 :レッスンは大変でした。でも、みんなと一緒に練習していく中、どんどん楽しくなってきて、最後の舞踊大会のシーンでは、「もうこれが最後。先生とも離れてしまう」って思って大号泣しました。

この日の檀上で、両親役の井浦新と市川実和子の間に立った恒那。二人との共演について
恒那 :市川さんは撮影の合間など気さくにお話ししてくださり、そのおかげで緊張がほぐれて楽しく撮影することができました。 私(ソヒ)がお父さんの大事にしていた勲章を売ったことがばれて喧嘩するシーンで、「やめて!」と言うタイミングを間違えてしまい、自分の中では「やらかしちゃったな💦」って思っていたんですが、井浦さんが「その時に自分の感情から出たものなんだからそれは失敗じゃないし、自分の感情で自分のやりたいようにお芝居していいんだよ」っておっしゃってくださったのがすごく印象に残っています。
井浦新 :(そんなことを言ったなんて)ぜんぜん覚えていませんでした(照)。 でも、台本に書かれたものよりも自然に生理的に出た言葉の方が、その瞬間に言いたくなるから出るんだろうと思ったからそう言ったんだと思います。お父さんのサンジュは結構家族からうざったがられている役どころだったので、現場ではあまり仲良く一緒に会話したりすることはしないほうがいいかなと思い、程よい自然な距離感を保っていました。実和子さんがみんなと話をして家族の骨組みは作ってくれていたので、僕は「家族が笑顔でいるのっていいな」って遠くから見て過ごしていました。

父親役のオファーを受けた時や台本を読んだ時の想い
井浦新 :監督から台本と温かいお手紙をいただきました。最初に台本を読んだ印象は、平凡な家族の物語、少女の青春を描いたものが軸だと感じました。僕は 孫明雅監督の師匠でもある是枝裕和監督の下で俳優としてデビューしたというご縁もあって、孫明雅監督の下で一緒に映画作りをしたいと思いました。撮影監督の山崎さんもデビュー作からご縁のある監督だったので、懐かしさを感じられる撮影現場になるかなと思いました。でも初日に現場に入ったら是枝監督の面影は無くて、孫監督独自の現場作りをされていました。山崎さんも孫監督とだからこそ撮影監督としてそこにいるという感じで、懐かしさというよりも新しさを感じながらやっていました。台本で読んだ時よりももっとキラキラした、美しくたくましい映画で、参加してよかったと思いました。
孫明雅監督 :初めて新さんと面談した時に「世の中には必ず差別があって、この映画を作ったとしても差別はなくならないと思うけれども、自分がその差別をなくすために何か一つできることとして、この映画に参加したいと思います」とおっしゃってくださいました。社会のために、社会がこうなるために自分が俳優としてできることをするっていうところが、新さんはすごく サンジュ(井浦新の演じる父親)だなって思いました。

30年来の友人である井浦新と夫婦役としての共演や、ソヒの母親役を演じたことについて
市川実和子 :新君とは10代の時から知っている仲なので、時を積み重ねた夫婦の空気は私たちにしか出せないんじゃないかなと思います。 恒那ちゃんは見た目とは違ってなかなか肝がすわっていて浮いているところがなくて、現場でもすごく自然なんです。なので自然な親子関係を演じることができました。
井浦新 :いつも感心してましたよね。ちゃんとしている、しっかりしているって。
市川実和子 :言い方は悪いけれど、恒那ちゃんって、すごいおっさんで(笑)。すごい女優さんって、結構おっさんみたいにどっしりしたところがある方が多いんです(笑)。だから「恒那ちゃんも大物になるぞ」って新くんやマネージャーと話していました。

自身も朝鮮舞踊経験者だが、今回朝鮮舞踊の先生役を演じたことについて
ちすん :学校の部活動で9年間朝鮮舞踊をやっていました。私にとって朝鮮舞踊は青春そのものだったので、このような形で描いていただき、たくさんの方に見ていただけることは本当に感慨深く、すごく嬉しく思っています。撮影では恒那ちゃんを筆頭に舞踊部の子たちが 1年間みっちり朝鮮舞踊を練習してきていたので、本当の部活のような雰囲気で撮影することができました。1日や2日の練習では到底出せないあの空気感の中、私自身すごく懐かしさを感じつつ緊張感もある中で、舞踊部の子たちと部活のシーンが撮れたことはすごくいい思い出になっています。ちょっと怖い先生に映っていたかもしれないですが、すべて監督の指示通りでございます(笑)。
孫明雅監督 :私とちすんさんは、大阪で同じ高校に通っていました。7学年上なので被ってはいないんですが、友達のお姉ちゃんから「すごく朝鮮舞踊がうまいレジェンド級の人がいる」っていう話を常々聞かされていた人がちすんさんでした。今回こうやって先生役を演じてくださりとても嬉しいです。

自身も大阪で朝鮮学校に通っていたという観客からの質問: 劇中、朝鮮学校では朝鮮語を使わなくてはいけないシーンがすごくリアルだった。キャストの方たちはどのような方法で言葉を覚えたのか?
井浦新 :僕は監督が音データを録ってくださったものをひたすら聞き続けてましたね。監督の声をもうこれ以上聞きたくないって思うぐらい(笑) 、監督からいただいた音声を毎日音楽のように聞き続けて体の中に馴染むまで入れていきました。普通なら言語指導の方とかがやってくださるのですが、監督自ら音源を録って下さることもこの作品を作っていく上での姿勢と感じて、ありがたいなと思いながらひたすら聞いて覚えてました。
孫明雅監督 :日本語にRの発音がなくて、恒那ちゃんはRで苦戦していましたが、新さんは Rで一切つまずきませんでした。
恒那 :難しかったです。何度もNG出しちゃって。アフレコも、Rだけやったりしました。
市川実和子 :私、二言だったんです(笑)。でもずっとNG出して💦 「안녕하세요(アンニョンハセヨ=こんにちは)」と 「 잘 먹겠습니다(チャル モッケッスムニダ=いただきます)」だけだったんですけれどね…。
ちすん :私は大阪の朝鮮語になっていて….(笑) 。監督から「これは東京の話だけど、そのままでいいです」って、そのままやらせてもらいました。
孫明雅監督 :在日一世が二世に教えて、二世が三世に教えていくうちに、かなり訛っていくんです(笑) 大阪弁ぽい朝鮮在日語、東京弁の朝鮮在日語があって。

最後にメッセージ
孫明雅監督 :朝鮮学校のことを知っていただこうと思って作った映画ですが、大々的に広告をうったり、テレビでやったりはしないので、ご覧になってもし良いと思っていただけたら周りの方に口コミで広げていただけますとすごく嬉しいです。よろしくお願いします。
井浦新 :この作品は世の中の不条理とかを強く訴えるような作品とはちょっと違う、キラキラとした青春映画で、隣のお家から聞こえてくるような本当に身近にある家族の物語です。でも、何か強いシーンがあり、皆さんも自分自身や家族や自分の娘とかと重ね合わせながらご覧いただいたのではないかと思います。是非『トロフィー』の気に入ったところや感想などをたくさんの人に伝えていただけたら大変ありがたいです。 他の目線で観るとまた少し物語の角度が変わって違う楽しみ方もできると思うので、是非 2度 3度と観て楽しんでいただければと思います。
恒那 :今日は本当にたくさんの方に観ていただけてとても嬉しいです。何か、観た人の心に残るような作品になっていたらいいなって思っています。本日はありがとうございました。

上映後の舞台挨拶だったが、映画のエンドロールの時、客席から大きな拍手の音が聞こえて来た。
舞台挨拶に立つ井浦新、市川実和子、恒那は本当の家族のようだった。そして朝鮮舞踊の先生としてソヒ(恒那)を導くちすん、孫明雅監督がこの家族を見守っている….。そんなとても温かい空気が流れた時間となった。
text & photo : Chizuru Otsuka
映画『トロフィー』公開記念舞台挨拶 実施概要
■実施日/7月11日(土)
■会 場/テアトル新宿(東京都新宿区新宿3丁目14−20 新宿テアトルビル B1)
■時 間/ 15:20〜15:50 ※上映後イベント
■登壇者/恒那、井浦新、市川実和子、ちすん、孫明雅監督

©2026 K2 Pictures
【公開記念イベントスケジュール】
▪️7月14日(火)
【企画】孫明雅監督&井筒和幸監督 トーク付き上映
【時間】19:30〜の上映回 ※上映後トーク(上映は『トロフィー』のみとなります)
【場所】新文芸坐
【登壇】孫明雅監督、井筒和幸監督
※チケット販売
7月7日(火)午前0時〜劇場HPにて販売
https://www.shin-bungeiza.com/schedule#d2026-07-10-1
▪️7月15日(水)
【企画】しゃべれば in テアトル新宿 Vol.4『トロフィー』
【時間】20:00〜上映回
【場所】テアトル新宿
【登壇】孫明雅監督、矢田部吉彦氏(元・東京国際映画祭ディレクター)
※チケット販売
・7/3(金)PM18:00 会員先行販売
・7/3(金)PM21:00 一般販売
https://ttcg.jp/theatre_shinjuku/topics/
▪️7月18日(土)
【企画】『トロフィー』『夢のつづき』併映・孫明雅監督×菅井友香さんトーク付き上映
【時間】14:00〜の上映回 ※上映後トーク(『夢のつづき』『トロフィー』の順に上映予定
【場所】丸の内ピカデリー ピカデリー2
【登壇】孫明雅監督(『トロフィー』『夢のつづき』監督)、菅井友香(『夢のつづき』主演)
※チケット販売
7月4日(土)PM22:00〜劇場HPにて販売
https://www.smt-cinema.com/site/marunouchi/index.html
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<新・90秒予告> YouTube URL:https://youtu.be/h3VyS3Hin5I
<クレジット表記> ©2026 K2 Pictures
ストーリー
K-POPアイドルのライブにいくためにソヒが売ったのは
父が大切にしていた、祖国・北朝鮮の勲章だった——
主人公は在日コリアンの14歳の少女・ソヒ。朝鮮学校に通い、部活で朝鮮舞踊に打ち込む日々を送っている。
ある日、日本学校との交流会で日本人の未来とK-POP好きという共通点で仲良くなり、ソヒは少しずつ外の世界と繋がりを持っていく。
そんな中、ふたりは推しのK-POPアイドルのライブチケット代を稼ぐために、ソヒの家にある不用品をフリマサイトで売ることに。
そこで意外にも高値で売れたのは、朝鮮学校の校長である父・サンジュが持っていた一枚の北朝鮮のCDだった。
それに味をしめたソヒたちは、サンジュが祖国・北朝鮮から授与された”勲章”までも売ってしまうー。
在日コリアンのひとつの〈今〉を描いたオリジナルストーリー
近くても分かり合えない父との関係、朝鮮舞踊に対する社会からの視線。
そして思春期ならではの未熟さ。家族、友達、そして朝鮮舞踊。そのすべての間で揺れながら、少女は少しずつ自分自身の世界を見つけていく。
監督:孫明雅 Son Myong A
1989年、大阪出身。在日コリアン3世。
関西大学卒業後、テレビの制作会社に勤務。2017年より分福に所属。
西川美和監督の『すばらしき世界』、是枝裕和監督の『ベイビー・ブローカー』で監督助手を務めた。
そして初監督作品である短編映画『夢のつづき』がショートショートフィルムフェスティバル&アジア2025秋の国際映画祭で上映された。
<作品概要>
監督・脚本 孫 明雅
恒那 / 梨里花 原田花埜 禾本珠彩 千就 / ちすん 笠松将
ソウジ・アライ 黒田大輔 山中崇 白川和子 YOU きたろう / 市川実和子 / 井浦新
音楽 Yonrimog
撮影 山崎裕
照明 山本浩資
録音 島津未来介
美術 徐賢先 大原清孝
衣裳 小林身和子
メイク 知野香那子
助監督 ⻆屋拓海 中島 将 石井 翔
制作担当 井上純平
キャスティング 田端利江 山下葉子
編集 小原聡子
音楽プロデューサー 本谷侑紀
製作 紀伊宗之
プロデューサー 小出大樹
ラインプロデューサー 村岡伸一郎
製作・配給 K2 Pictures
企画 分福
制作プロダクション K2 Pictures Production
©2026 K2 Pictures
公式サイト:https://k2pic.com/film/trophy
公式X:@trophy_film_710(https://x.com/trophy_film_710 )
公式Instagram:@trophy_film_710(https://www.instagram.com/trophy_film_710 )
K2 Pictures公式サイト:https://k2pic.com/