2019年11月7日から10日まで 中目黒キンケロシアターにて 演劇『タクシードライバー』が上演される。 初日初回公演前、同劇場にてゲネプロと会見が行われた。

韓国からCROSS GENE(クロスジン)の セヨンがキャスティングされている。

日々、様々な客を迎え 様々な目的地へ送るタクシードライバー・倉田鉄男(モロ師岡)。 乗客たちの人生の一瞬の時間を共にしながら走り続ける。乗客たちとの会話の中からその人となりに合わせた言葉を返していく。 そんな鉄男自身、元ヤクザから堅気となり、今や無事故無違反10年勤続というなかなかドラマチックな人生を送って来た。

リストラされた部長、都会の道に迷う田舎から出てきた女性、元舎弟とその舎弟、不倫カップル、アイドル、酔っ払い…  多様な乗客との短い会話の中にも人生を感じ、自らの過去の過ちを投影し自責する。

寡黙ながら乗客の心をほぐす聞き手となる ドライバー 鉄男をモロ師岡は見事に演じていた。 運転する場面が多く、大きなアクションはあまりないにもかかわらず、タクシードライバーとしての役目を誠実に果たす鉄男の中に、自らの人生の後悔や今の心情をしっかりと感じさせてくれた。

リストラされた部長、酔っ払い、ヤクザ… 一人三役を演じ分けた中村繁之。 モロ師岡とは反対に、大きなアクション、豊かな表情の変化でそれぞれの役の人生をわずかな時間の中で映し出していた。「昭和生まれの男」の過去の栄光と現代に感じる悲哀感を観る側にしっかり訴えかけていた。

鉄男が日々乗せている女社長 茜役の杉本彩。 鉄男とさらりと交わす会話の中に鉄男の心のよりどころともなり、鉄男が茜のよりどころともなる。 色々な乗客の重めの人生を感じたあと、杉本が登場する度にオアシスのように、自然に 一息つかせてくれた。

韓国のグループ CROSS GENEのセヨンは この公演でチンピラ 時央の役を演じている。セヨンは過去、韓国や日本で舞台に数本出演している。 その経験が今回の舞台にしっかりと活かされている。 細かい表情や仕草の演技はもちろんだが、日本語のセリフの完璧さは特筆すべき点である。韓国人キャストであることを一切感じさせないイントネーション、アクセント。 日本での活動は長いとは言え、常に在住しているわけでもない中で、これだけ美しくなめらかに そして その中に感情を込めてセリフを語ることが出来るのは本当に素晴らしい。 また、美しい容姿のアイドルだが、今回の体当たりの演技の中で アイドルタイムには決して見ることが出来ない姿も見ることが出来る。セヨンの新境地に挑む姿を是非会場で感じてほしい。

また、今回の舞台では 実生活で役者をやりながら現在タクシードライバーも兼業している平山大、やまさきまさきの二人にも注目したい。

その他 出演者たちも 巧みな演技で、それぞれの役どころの人生模様をガッツリと見せている。

また上演回ごとに替わるDJケイ役の特別出演者たちも楽しみの1つとなっている。

毎回違ったテイストで 演劇『タクシードライバー』を楽しみながら、自分の人生も振り返ることが出来るのではないだろうか。


公演後には 会見が行われ、それぞれの思いなどを語ってくれた。

会見には モロ師岡、中村繁之、杉本彩、セヨン(CROSS GENE)が登壇した。

◆モロ師岡さんに伺います。 本舞台は体力勝負だと思いますが、苦労している点、楽しんでいる点それぞれをお聞かせ下さい。

モロ師岡 「ずっと運転をしている役なので同じ姿勢をとっているため、大アクションはないのに地味な割に ものすごく疲れます(笑) 色々なかたと会話をする役ですが、一度も目を合わさずに演じます。 その辺、心と心の会話をどこで発信して どこでキャッチするかを楽しみながら演じています。」

◆中村繁之さんに伺います。今回一人三役を演じますが、それぞれの見所や、気をつけているところを教えてください。

中村繁之 「三役というのは僕の芸能生活 初です。 ひとつずつ、衣装はもちろん違いますが、髪型や化粧で変えるのではなく、声色だとか動きなどで自分がどれだけ心を切り替えることが出来るかを心がけ演じているつもりです。」

◆杉本彩さんに伺います。 今回、蘭乃はな さんとWキャストですが杉本さんらしいポイントは?

杉本彩 「人情味があり 温かく見守る部分をすごく大切にしたいなと思っています。」

◆セヨンさんに伺います。全編日本語での上演となりますが、苦労している点、楽しんでいる点をお聞かせください。

セヨン「楽しんでいるところは…全部ですね! 芝居を横でずっと見ているんですが、色んなキャラクターがちゃんと見えるから全部面白いなぁって思います。 セリフが心の中にキュンっと刺さってくるんです。そういうところもいいなぁって思っています。僕自身の役として楽しい部分は…全部ですっ!!(笑)全部好きです。」

◆ここは是非見て欲しい、オススメだという部分は?

中村繁之 「セリフを長々しゃべっている所は俳優としてミスが無いように、いい間で入っていければいいなと思っています。完全に酔っ払っている役は初めてです。泥酔している客… ちょっとはここは失敗しても大丈夫かなっていう安心感の中やっていますが(笑)、皆さんにもここが1番のびのびしているようには見えるかと思います(笑)  ここからヤクザの役に変わった時の落差を観客の皆さんには楽しんでいただけたらと思います。」

杉本彩 「自分の出演場面ではないのですが、稽古の時からツボに入ってしまい、楽しませていただいているのが、モロさんと中村さんの酔っ払いのやりとりのシーンです。ほんとにあそこが毎回大爆笑で…。 是非皆さんにも楽しんでいただけたらって思っています。」

セヨン 「モロさんのアドリブが毎日楽しみです。毎日違うので。 もし皆さんが台本を見たらきっと “あ、ここ アドリブだったんだ”って思うと思いますが、僕的には台本のセリフを全部知っているので、今日もまた違っていて。 そんなアドリブで皆の心を掴んでいく…そんな部分が見所だと思います。」

モロ師岡 「もう一生二度と来ないであろう渋い役、倉田鉄男を見ていただきたいです。マジな渋~い倉田鉄男がちょっとお茶目なこともします。その渋さ加減を楽しんでいただけたらって思います。渋さの中にある、ちょっとクリーミーな部分も(笑)楽しんでいただけたらありがたいです。」

◆稽古場でのエピソードなど聞かせてください。

中村繁之 「出演者全員、お互い初共演なんです。20日位前に顔を合わせて、短い時間の中でチームワークを築こうと責任感を持って今日まで来ましたが、いい輪が出来上がったと思っています。」

杉本彩 「私は こう見えて人見知りなのですが、今回初共演のかたばかりですし、モロさんという大先輩もいらっしゃって緊張感をもっていました。 それなのに初顔合わせの日の時間が間違えて伝えられ、私だけ1時間遅れてしまった申し訳ないエピソードがあります。」

セヨン 「大先輩たちとの共演でめちゃ緊張するし、日本語の発音とかイントネーションが大丈夫かとても気になったのですが、先輩たちから ”一緒にやってみようね”と言っていただき、練習場でとてもHAPPYな空気を感じました。本当に幸せな稽古でした。」

モロ師岡 「今回主演で出番がとても長いので、稽古中、体調を崩してしまった時がありました。今まで主演のかたが体調を崩したりするのを見て “情けないな”って思ったこともあったのに、自分も主演をやってみたらそうなってしまって…。今まで “情けないな”って思ったことを本当に申し訳なかったって思いましたね。ずっと運転している姿勢で、ものすごく肩と背中が痛くなるんですが、若い人たちが入れ替わりたちかわり肩を揉んでくれたり…。もう、どう感謝したらいいか…。 全員を海外旅行に連れて行ってあげたいくらい(笑)  お金があれば連れていってあげたいんですがねぇ(笑) もしよかったら俺の運転で日本全国タクシー回してあげたいくらいです。でも実際はムリなんで(笑)中目黒から池袋くらいなら(笑) 全員一人一人に感謝の気持ちでいっぱいです。」

◆皆さんの人生の転機となった出来事を教えてください。

モロ師岡 「結婚したことが第1回の転機ですね。何度か危機もありましたが(笑) 結婚25年を迎え、いいカミさんと結婚したなって思っています。いい出会いだったと感謝しています。今回の芝居も僕にとってとてもいい出会いで、同じくらいどちらにも感謝しています。」

中村繁之 「僕は14歳の時にジャニーズ事務所を受けてジャニーさんに会ったのが人生の大きな転機ですね。 それまではジャガイモみたいなコでしたが、そこから今日まで続けられているのも、その出会いという転機があったからだと思っています。」

杉本彩 「24歳で独立し、結婚しました。30代半ばで離婚し、映画『花と蛇』という大きなチャレンジをしたのも大きな転機ですね。40過ぎて再婚したのも転機ですね。」

セヨン 「僕は19歳で音楽に興味をもったのが大きな転機ですね。そこから自分の人生が大きく変わりました。 19歳くらいって将来の夢をめちゃ考える頃ですが、僕は早く決めることが出来なくてどうしようって迷っていたんです。そんな時、友達が音楽をやっていて 見に連れて行ってくれた時、音楽というものを通じてみんながひとつになれるんだということを感じたのが転機となりました。」

◆最後に皆さんがタクシーに乗った時のエピソードを聞かせてください。

モロ師岡 「僕が学生だった時タクシーに乗ったんですが、あまりお金が無くて目的地の駅に着かないうちに “お金が無いからもうその辺で停めてください”ってドライバーさんに言ったんです。そうしたら、そのまま乗せて行ってくれたことがあります。」

中村繁之 「僕は亡くなった父がタクシードライバーだったんです。会社でもキャリアが長かったからか、普通は一台を数人交代で使いますが、父は一人で一台を預かっていて、たまに乗って帰って来たので、子供の頃、タクシーの中を色々見ることが出来ました。 父は成田空港近辺のタクシー会社でしたが、成田空港の滑走路がまだ出来上がっていない時、空港建設に反対して立ち退かない人たちを乗せると、滑走路の真ん中にある家に行く時、滑走路を走ることが出来るって自慢していました(笑)」

杉本彩 「タクシーは本当にしょっちゅう利用しています。そのためか、東京でも京都でも乗ると“ご自宅でいいですか?”って聞かれるんです(笑) 場所を言わなくても自宅に連れていってもらえます(笑)  あと…バブル時代、一回だけ京都から東京までタクシーに乗ったことがあります(笑) 」

セヨン 「実は、僕はあまりタクシーに乗ったことがないんです。韓国でも日本でも会社の車に乗って移動します。 あ、日本では電車に乗ります! でも違う方向に乗ってしまったり(笑)」

中村繁之 「稽古場に来るのに3回くらい別の方向に行っちゃったんだよね(笑)」

セヨン 「はい、間違えました(笑)」

そんな和やかなエピソードで締めくくり、会見は終了した。 カンパニーの輪はしっかり出来上がり、お互いが信頼をもって演じることが出来ているのが強く伝わって来た。実力派揃いの演劇『タクシードライバー』。 無骨なタクシードライバーと、さまざまな人たちの人生の縮図が詰まったこの舞台は心の中に深く染み入ってくる。

text & photo : Chizuru Otsuka


演劇『タクシードライバー』

日程: 2019年11月7日(木)~10日(日)

劇場: キンケロシアター (東京都目黒区青葉台1丁目15−11)

http://kinkero-theater.com/

時間:

   7日(木) 19時~

 8日(金) 15時~ / 19時~

   9日(土) 13時~ / 18時~

  10日(日) 12時~ / 16時~

出演;

モロ師岡 中村繁之 セヨン(CROSS GENE) 後藤郁 橘のぞみ 平山大 やまさきまさき 岡本椛里 

蘭乃はな 杉本彩 (Wキャスト)

ゲスト:(出演日時は公式HPにてご確認ください)

井出卓也 谷佳樹 村川翔一 深澤大河 KOHEY(BUZZ-ER.) 斎藤秀翼

演出: 藤重政孝
脚本: 長谷部成彦

公式サイト: https://taxidriver.themedia.jp

公式Twitter: @taxidriver2019 (https://twitter.com/taxidriver2019