
韓国ミュージカル『インサイド・ウィリアム』が2025年3月13日(木)~3月23日(日) 、三越劇場(東京)にて上演中。(全18公演)
公演に先立ちゲネプロ公開&取材会・フォトセッション が行われた。
本作は4人の登場人物を10名の俳優陣がダブルキャスト、またはトリプルキャストによる回替わりで上演。キャスト組み合わせがすべて違うので何度観ても毎回違う、「一期一会の公演」となっている。
シェイクスピア役:平野良 / 鍵本輝(Lead)
ロミオ役:橋本祥平 / 野嵜豊
ジュリエット役:岩田陽葵 /舞羽美海 /吉宮瑠織
ハムレット役:宮島優心(ORβIT)/ 大澤駿弥(ORβIT) / 磯野亨
2021年と2023年に、韓国・ソウルの演劇の街・大学路(テハンノ)で上演され大好評を得た作品で、ウィリアム・シェイクスピア自身そしてシェイクスピア作品を笑いと奇想天外な想像で現代の価値観に重ねながら描かれているのが特徴。
セリフの50〜60%がシェイクスピア作品から使われており、聞き馴染みのある名台詞が歌詞やセリフとなって彩り、これまでになかった新鮮さに加えてシェイクスピア作品の引用により文学的な豊かさが加っている。

世界的な名作の誕生を夢見て “名作はこれさえ守れば書ける”というマニュアル本に知恵を借りながら必死に物語を書き進める ウィリアム・シェイクスピア。 父親の復讐に成功した王子『ハムレット』の物語や、家門の反対を乗り越え愛を成し遂げようとする『ロミオとジュリエット』の物語を執筆中、突風により2つの原稿が舞い上がり混ざってしまう。 飛び散った原稿をかき集めていると、物語のキャラクター、ハムレット、ロミオとジュリエットの3人が目の前に飛び出していた…。

そのキャラクターを生んだシェイクスピアの意に反し
・ジャンルを問わずいつでも主人公でいたいロミオ
・愛より剣を愛するジュリエット
・復讐より詩を書きたいハムレット
と、まったく違うキャラクターの3人。 しかしシェイクスピアはなんとか軌道修正して作品を完成しようと奮闘する。

この日のゲネプロは、シェイクスピア役を平野良、ロミオ役を橋本祥平、ジュリエット役を岩田陽葵、ハムレット役を宮島優心(ORβIT)の組み合わせにて公開された。

「シェイクスピア作品をオマージュし、セリフの50〜60%がシェイクスピア作品から」…と聞くと、なんだか難しい内容、重たいイメージが思い浮かぶが、本作品は誰でもシェイクスピアに馴染めるように笑いの要素がかなり盛り込まれている。 笑いながらいつの間にかシェイクスピア作品に触れることができる。また『ロミオとジュリエット』 『ハムレット』以外のシェイクスピア作品の香りも感じることができる。


自分の作品の登場人物に憑依しながら書き進めていくシェイクスピア。世に残る名作を書きたいと、書き方のマニュアル本を参考にするも、なかなか思うように書くことができず苦悩する。 執筆シーンでは、ロミオ、ジュリエット、ハムレットなど登場人物たちが言葉を発する際、書斎机でそれを書いているシェイクスピアも同時に口やからだを動かす。 例えばハムレット役がセリフを言うと、後ろで同時にシェイクスピアがその言葉を執筆しながら口を共に動かす。つまりシェイクスピアを演じるキャストは、シェイクスピア以外何役もこなし、そのセリフをすべて語らなくてならない。 ロミオとジュリエット、ハムレット以外、亡霊、乳母、オフィーリアなど、作品に登場する人物を書くたびに、全てその人物になりきり、言わせたいセリフをシェイクスピア自身が語る。 相当なエネルギーと演じ分けのスキルが必要だ。 シェイクスピア役の平野良はそれを器用にこなし、重鎮なキャラクターから、かわいいキャラクターまでを完璧に演じ分け、素晴らしいとしか言いようのない圧巻の演技を見せた。

『ロミオとジュリエット』は悲愴感漂うストーリーだが、この『インサイド・ウィリアム』に出てくるロミオとジュリエットはちょっと違う、かなりの陽キャラ。とにかく主役でいたい目立ちたがり屋に変身してしまったロミオ。シェイクスピアが理想とする、悩みを抱え運命に翻弄されるロミオとはまったく異なる、ちょっとオバカだけど可愛いロミオを橋本祥平が愛嬌たっぷりに演じ、ロミオという人物を一層輝かせていた。 ずっと見ていたくなるようなロミオだった。


原作ではただロミオを愛し待ち続ける繊細な乙女ジュリエットも、本作では剣を見ると自然と手が伸び、振り回すことに快感を感じてしまうかなりお転婆なジュリエットが登場する。岩田陽葵はハリのある伸びやかな歌声と共に表情をくるくると変えながら、時にお茶目、時に勇ましいジュリエットを見事に演じていた。

ハムレットを演じたのは 韓ペンでもお馴染みのボーイズグループ、OrβIT(オルビット)のメンバー、宮島優心(YUGO)。フワフワヘアとベビーフェイスでとても可愛い印象を受ける宮島だが、今回のミュージカルではそんなイメージを完全に払拭し、凛々しく精悍な新しい姿を見せた。復讐をしなくてはいけない…でも本当は詩を書いて過ごしたい… そんなハムレットの心情を、深みのある歌声と落ち着いた口調で表現した。特に芝居前半、オフィーリアに別れを告げ旅立つ際の楽曲で力強く情熱的に歌う声は、驚きと大きな感動を与えてくれた。


登場人物4人がとにかくエネルギッシュ。そしてものすごいテンポで飛び交うセリフ。役者たちが渾身の演技でこの作品の魅力を伝える。 難度の高い数々の楽曲を見事に歌いこなし、力強く、そして調和のとれたハーモニーを届けてくれる。その歌を支えるキーボード、バイオリン、チェロのアンサンブルの音色にも耳を傾けたい。
シェイクスピアが作り上げたキャラクターたちは、本当はこんな風に生きたかったのかも…。そう思えるほど、キャストたちが演じる新しいキャラクターたちは輝きを放ち、生きる喜びに満ち溢れていた。もしも本当にこんなキャラクターだったら、彼らはどんな人生を送っていただろう??そんなことを考えながら観るのも楽しいかもしれない。 ハムレットとジュリエットが絡んだり、ロミオとハムレットが会話を交わしたり…今まで考えられなかった世界がこの舞台上では繰り広げられる。劇場でこの不思議な世界を是非とも体感してほしい。

ゲネプロ公開後に行われた取材会にはシェイクスピア役の 平野良 と 鍵本輝(Lead)、ロミオ役の 橋本祥平 と野嵜豊、ジュリエット役の岩田陽葵 、舞羽美海 、吉宮瑠織、ハムレット役の宮島優心(ORβIT)、 大澤駿弥(ORβIT) 、磯野亨のキャスト10名全員が登壇した。(以降、苗字表記)

◆ゲネプロを終え、初日を迎えるにあたり今の気持ちは?
平野:一か月近く稽古を重ね、初日を迎えます。毎回組み合わせが違うので毎回新鮮な気持ちで、来て下さったお客様といっしょに作れるかなというのをゲネプロからも感じられたので楽しみです。
橋本:一か月間の稽古の前から歌の稽古が始まるなど、いつもよりも長めに作品に携わらせていただきました。本番では今まで目覚めなかった感情が生まれてくるのかなとゲネプロをやってみて感じました。日々違う公演になるので、どの公演も楽しんでいただけたらと思います。
岩田:ここにお客様が入られてどのようにこの作品を受け取っていただけるか、今、ワクワクドキドキしています。本番では舞台に立つのは4人だけですが、ここまでキャスト10人一丸となって作り上げて来たので、毎回全員でこの舞台に立つつもりで千穐楽までバトンをつないで頑張ります。
宮島:この作品はメッセージ性のある作品だと思っていて、素敵なセリフがたくさん散らばっているので、それをお客様にとって明日の希望とか夢とか活力になるように届けられたらと思っています。

◆今回の最大の特徴、回替わりでの上演の魅力は?
鍵本:魅力しかないなと思っています。この10人は得意としていることがそれぞれ違うので、それが組み合わさることで色んなケミストリーが毎公演生まれると思います。同じ料理でも少しずつ味つけが違う、そんな作品になっているので毎公演楽しんでいただけたらと思います。
舞羽:この作品のメッセージや終着点は同じですが、4人のうち3人一緒でひとりだけ替わるだけでも、舞台上にまわるエネルギーや役者同士の思いが全然違うものになって、とんでもない化学反応を起こしています。何回でも楽しんでいただけるのではないかと思います。唯一無二のキャラクターたちがシェイクスピアをどんどん巻き込んで大暴れしています。

◆見どころ、魅力は?
大澤:もちろん本編もですが、三越劇場という歴史ある劇場で、入った瞬間からシェイクスピアの世界観が広がります。二階席のバルコニーに本当にジュリエットがいるんじゃないかと思えるような空間です。 この素敵な劇場を活かした演出もありますので、この作品のメッセージ性やさまざまな演出にも注目していただけたらと思います。
吉宮:音楽がとても素晴らしくて、ぐっと心に来る楽曲だったり、楽しいと思える楽曲を生演奏で聴けたりするのも魅力の一つだと思います。
野嵜:生演奏ならではの魅力があって、芝居にも歌にも熱量が乗っかっていきます。歌もダンスもあって、それぞれの役が目立つシーンがあるのでそこにも注目してほしいです。 ロミオがジュリエットに見せる求愛ダンスも楽しく表現しているので是非注目してください。
磯野:組み合わせが異なるので複数公演観ていただき、違いを感じてほしいという思いが強いです。同じストーリーでも組み合わせが異なることによって生まれる違いを感じてほしいと思います。



◆作品への意気込みを聞かせてください
平野:組み合わせがいっぱいあるので一公演一公演、一期一会だと思っています。精一杯頑張って稽古して来ました。劇場を一歩出ると百貨店内に飾られている高級な御品物たちに負けない、価値を持つ作品にしたいと思います。
鍵本:この作品はシェイクスピアが生きていた時代の話ですが、時を経て今の時代と重なる部分も多いと思っています。人の評価やレビュー、SNSへのコメントなど、いろんな人の声や目を気にして、やりたい自分が表現できない時代になっているのではと思っていますが、そういうことは考えなくていい、望むように進めばいいということがこの作品を通して伝わったらいいなと思い、みんな切磋琢磨しながら稽古を頑張って来ました。本番でもそれが伝わるように精一杯表現していくので、千穐楽までよろしくお願いします。
◆さまざまなキャストで行う舞台だからこそ稽古中に感じた難しかったこと、楽しかったこと、自分の中に新しく発見したことなどあればお聞かせください
鍵本:ダブルだったりトリプルだったり、自分の中でこうやって作っていこうというプランって人それぞれ違うという発見、僕はこっちだと思ったけど良くん(平野)はこっちなのかとか。僕にないアイディアがどんどん出てくるので、稽古で毎日見るたびにちょっと悔しいって思ったんですが、唯一ひとつだけ勝てるポイントを見つけた瞬間は嬉しかったですね(笑) 途中で踊るシーンがあるんですが、チャールストンっていうステップだけは絶対勝てるってね(笑) 本当にみんなそれぞれ得意分野があるので稽古では毎日勉強だと思っていました。
平野:楽しいことしかないというか、難しいという感覚は無いです。年齢も芸歴も違うし、培ってきたメソッドも違った人たちが組み合わさるというのが毎回面白く新鮮でした。全員、生まれてきてくれてありがとうって思いながら稽古していました(笑)
橋本:ダブルキャストでやるのが僕自身初めてで、どんなスタンスなのかな、バチバチの雰囲気なのかなってちょっと思っていたんですが、真逆でみんなで一緒に作り上げるっていうのが日本の演劇の素晴らしさですね。 いい空間の中で作れたかなって思っています。
岩田:同じセリフでも言う人によってこんなにメッセージの伝え方や受取る気持ち、その人から出るエネルギーとかが違うんだなっていうのを感じ、稽古の時からすごく楽しくて。 自分が投げるのも、みなさんから受け取ったものをどう返そうかって考えるのも本当に楽しかったです。本番も毎回キャストが変わるので、新鮮な気持ちで、今日は何が生まれるのかと楽しみながら舞台に立てると思いますし、お客様にもそれが伝わって一緒に楽しんで行く時間になれたらいいなと思っています。
宮島:僕もダブルやトリプルキャストは初めてで、今回ハムレット3人でこうやって作っていこうとか、ここはこういう気持ちなんじゃないかと一緒に考えたり話し合ったりすることがすごく楽しかったですし、毎日稽古場に来る人が違うので今日はこの人とお芝居ができると毎日楽しい気持ちで稽古場に向かっていました。
舞羽:とにかく稽古中は楽しくて。相談もできるし、忘れたことを聞いていてくれたり、ずっとジュリエット役3人で一緒に作っていたかなって思います。 同じ動きをしていても、出すエネルギーや見え方がぜんぜん違うのですごく勉強になりました。大変だったことは組み合わせによってなかなか一緒にお稽古ができないかたもいたので、本番でどうなるかがちょっとドキドキですが、毎回新鮮で楽しかったです。
大澤:僕自身、ミュージカルに初出演で右も左もわからない状態だったので、稽古期間中は正直なところ大変なことが多かったです。 エリート校に入ってしまった普通のコみたいな感じでした(笑)演出家の方を中心に演技や役作りから熱心にご指導をいただき、僕個人として次にやる作品や本業のアーティスト活動に活かせるものをいっぱい得られたので、大変でしたが学びの多い稽古期間でした。僕自身、結構緊張しやすいタイプなんですが、キャストのみなさんがめっちゃ温かくて、休憩時間や今日の楽屋などで気さくに話しかけてくださるのでとても楽しいし助かっています。ありがとうございます。
吉宮:ジュリエットのキャストを聞いた時、素晴らしい先輩たちでお二人とならんで大丈夫なのかなって不安だったんですが、お二人が本当に優しくていろいろ教えてくださったり、変更点をいない人も共有できるように書いたり、お菓子を一緒に食べたり。3人で作り上げたジュリエットをここからの期間大切にお見せしたいと思います。
野嵜:同じロミオ役の祥平くん(橋本)とは6年くらい前にご一緒させていただいたんですが、その時主役だった祥平くんと同じロミオ役を演じられることが本当にすごく光栄です。稽古中もたくさん勉強させてもらいました。貴重な機会をいただき感謝です。
磯野:トリプルキャストは初めてで稽古中も新鮮にお芝居させていただきました。困ったことやわからない感情など、(ハムレット役の)3人で集まって話す瞬間とかたくさんあって、そういう経験も初めてだったのですごく楽しかったです。 本番期間中、二日間出演が無い日があったりするのも初めての経験なのですが、いい緊張感を保って最後まで走らなくちゃと思います。
text & photo : Chizuru Otsuka
【STORY】
シェイクスピアは世界的な名作の誕生を夢見て「名作、これさえ守れば書ける!」というマニュアル本に従いながら、父親の復讐に成功した王子「ハムレット」の物語や、家門の反対を乗り越え愛を成し遂げる「ロミオとジュリエット」の物語を執筆していた。
執筆活動に没頭し、エキサイティングな話を書き進めていると、突然爆風が吹き付けてきて2つの原稿が飛び散り作品がごっちゃ混ぜになってしまった。
混ざりあった原稿をかき集めるシェイクスピア。ふと気配を感じると、なんとそこには物語の中のキャラクターであるハムレット、ロミオとジュリエットの三人が飛び出していた。
復讐より詩を書きたいハムレット。
愛より剣を愛するジュリエット。
ジャンルを問わずいつでも主人公でいたいロミオ。
この主人公たちを元の物語に戻して名作を誕生させたいシェイクスピア。
作家と世の中が望む結末の代わりに、“それぞれが望む結末“を探し出そうとする彼らは、自分だけのパラダイスを見つけることができるのか?!
たとえ名作の主人公でなくても、“自分の物語”の主人公になることを望む 姿を通じて、「インサイド・ウィリアム」は“特別でなくても十分に価値のある人生”の意味について朗らかに歌う。
【公演概要】
公演タイトル : ミュージカル「インサイド・ウィリアム」
日程:2025年3月13日(木)〜3月23日(日)18回公演
会場:三越劇場
チケット料金 : 全席指定 ¥11,550(チケット代¥10,500+税)
出演
シェイクスピア役 : 平野良 / 鍵本輝(Lead)
ロミオ役 : 橋本祥平 / 野嵜豊
ジュリエット役 : 岩田陽葵 /舞羽美海 /吉宮瑠織
ハムレット役 :宮島優心(ORβIT) / 大澤駿弥(ORβIT) / 磯野亨
韓国オリジナルスタッフ
作・作詞:キム・ハンソル
作曲・編曲:キム・チヨン
製作:演劇列伝
日本版スタッフ
日本語翻訳/訳詞 : 安田佑子
日本版台本/演出:西森英行
音楽監督 : 宮崎 誠
★公式ホームページ : https://inside-william.com/
★公式X : @inside_William
公演に関するお問い合わせ先 : inside.william.info@gmail.com
Ⓒ『ミュージカルインサイド・ウィリアム』製作委員会
Book & Lyrics by Kim Han Sol 김한솔 キム・ハンソル
Music & Arrangement by Kim Chee Young 김치영 キム・チヨン
Original Production by The Best Plays Inc. ㈜연극열전 (株)演劇列伝
企画・製作 : インサイド・ウイリアム製作委員会