【韓ペンオリジナルレポ】~映画『人生は、美しい』プレミア上映会トークイベント~韓国を熟知した二人・塚地武雅(ドランクドラゴン)と古家正亨が登壇。ミュージカル仕立ての本作品の魅力や楽曲について、そして夫婦について語る!

『エクストリーム・ジョブ』のリュ・スンリョンと、ドラマ「SKYキャッスル~上流階級の妻たち~」のヨム・ジョンア、実力派俳優二人の初共演で、人生最後の旅を共にする夫婦をポップな音楽とともに描いたハートフルなロードムービー『人生は、美しい』(原題:인생은 아름다워)が11月3日(金・祝)シネマート新宿、ヒューマントラスト有楽町他にて全国順次公開される。 

劇場公開に先駆け、10月19日(木)、「コリアン・シネマ・ウィーク 2023」の特別企画として、駐日韓国大使館 韓国文化院との共催でシネマート新宿・スクリーン1にて『人生は、美しい』プレミア上映会が開催され、韓国エンタメをこよなく愛するドランクドラゴンの塚地武雅氏、韓国文化と言えば一番に頭に浮かぶ韓国大衆文化ジャーナリストの古家正亨氏の2名が “特別トークイベント”を行った。BS フジの人気番組「MUSIC LIST OST って何?」でも共演中の気心知れた2人の弾むトークは、映画への期待感をさらに高めてくれた。

塚地:本来、こういうものって出演なさったかたが登壇するものですが、出てないのに…(笑) 何故か来ているという(笑) でも “試写だけ” よりはプラスになるんじゃないかな?って思っております。 ネタバレのないように(笑)見どころをお話出来たらと思っています。

塚地武雅(ドランクドラゴン)

古家:こうやって塚地さんとBSフジの番組以外で、2人で登壇するのって初めてですよね? 今回、映画『人生は、美しい』をベースにしたトークショーですが、事前にスタッフさんにお話を伺ったところ「久しぶりに劇場に韓流ファンの皆さんが戻って来ました」って喜んでいらっしゃいました。いわゆる韓流ドラマっぽい、喜怒哀楽が激しい、しかも観終わったあとはなんかホッとするし、何か考えさせられるみたいなものを皆さんこの映画に期待していらっしゃるのかなって思いました。

古家正亨

塚地:僕はこの映画を観て心がむちゃくちゃ動かされたというか…。振り幅がすごくて。 泣ける題材、本当にせつない、誰もが直面する出来事でもあると思うんですが、ただせつないだけでなく笑わせるんですよね。このお二人(リュ・スンリョン&ヨム・ジョンア)が素晴らしいお芝居をするんですよね。

古家:リュ・スンリョンさんが演じる韓国のお父さんって本当にどこにでも居そうな。

塚地:国民の中の国民ですよね(笑)この映画の中のお二人は本当に庶民というか、どこにでも居そうな人になっちゃうのがすごいですよね。

古家:夫婦がロードムービー的に人生を振り返っていくのが主軸になって、その先には何があるのかは、皆さん、ご覧になっていただければわかると思うんですが。 この映画、今日僕と塚地さんが呼ばれたのには理由があります!なんと、ミュージカルなんです!

塚地:そう、これが不思議ですよね。ただ普通のロードムービーではなく、ミュージカルなんです!!

古家:ミュージカルって実はすごく好き嫌いがあって。嫌いな人に理由を聞くと、「だって日常では歌わないじゃない」って言われるんですよね(笑)でもこの映画、違和感が無かったんですよね。

塚地: この二人が庶民として日常生活で急に歌い踊る、チープさとかコメディさを、あえて逆手にとって面白い感じにしているのが憎いですよね。

古家:なので違和感というよりも、こうやって見せてくれるならミュージカル、ありだなっていう感じですね。この映画に出て来る楽曲って、本当に韓国の90年代~2000年代の大ヒット曲のオンパレードで。 パンフレットに、どういうアーティストのどういう曲がどの場面で使われているっていうのを僕が書かせていただいたんですが、イ・ムンセさんの曲が多いんです。この映画を観た時、この監督はイ・ムンセの曲だけでミュージカルをやりたかったけど、行き詰って色んな歌も集めたのかなと思うほど(笑)イ・ムンセさんの曲への愛情が色んなシーンで感じられて。 映画館でデートするシーンがあるんですが、そこで流れるのが『早朝割引』っていう曲なんです。この映画って80年、90年代を舞台にしてるんですが、その世代がこの曲を聴いたらキュンとする曲なんですね。 韓国の映画館って朝イチはめっちゃ安いんです。だから学生はお金が無いから朝イチで映画館にデートに行くんです。 『早朝割引』を聴くと、その頃のキュンとしたこととか思い出したり。単純に歌が流れるだけではなく、その瞬間の流行っていた曲とか歌詞の世界もすごくリンクしていて、めっちゃ良かったです。

塚地:今に至るまでの過去を遡るシーンで出て来る、その時代のファッションとかね。 若い頃もこの二人が演じてるのがまたちょっと滑稽というか面白いんです(笑)スンリョンさんの髪型とかちょっと長めだったり(笑) その時代の流行を追ってるんですが、日本と流行りが似てるから、自分自身も振り返らせてもらえる感じでしたね。 20代の若者にはちょっとわからない哀愁みたいなものが我々世代だとより感じられると言うか。

古家:色々ないい経験を積まれたかたならより分かる感じですね。この映画は 二人の今であり過去が舞台で、「初恋の人に会いたい」と余命宣告を受けた奥さんが言う。 僕はもしうちの奥さんに余命宣告されたあと「初恋の人に会いたい」って言われたらいやですよねぇ(笑)リュ・スンリョンさんもすごいイヤがるんですが、そこから夫婦の絆が生まれていくから、楽しく観れるんですよね。

塚地:やっぱり恋をして結婚したっていうのを、過去を遡ってみると色々思い出すことがある、それぞれの皆さんにも思い当たることがあるんじゃないですかね。 昔と違って今のダンナはつまらないって思ったり(笑)僕は独身なんでよくはわからないですけどね(笑)

古家:その初恋の相手をオン・ソンウ(元 Wanna One)さんが演じてるんですが、塚地さんはK-POP出身のコがこうして役者として華々しく輝いているのを見ると胸キュンですよね?

塚地:K-POPアイドルが役者としても成功していくのを一番推しているかもしれないです。

古家:昔みたいに演技ドルっていう言葉を使わないくらい、もうみんな演技が出来る人がいっぱいいるから。昔はあまりいなかったので演技ドルって言ってましたけれど、今はいっぱいいますものね。そんな中でオン・ソンウさんの演技はどうでした?

塚地:初々しさもありましたし、初恋の人としていい像を持ってる。誰しも恋しちゃうだろうなって思える純朴さと可愛らしさがあって。この人が初恋の相手だったらそりゃしょうがない、リュ・スンリョンさんそりゃ仕方ないよ…(笑) 自分の付き合った彼女や奥さんの元カレが自分よりかっこよかったら、キツいですよねぇ(笑)大半は自分よりかっこいいしね~(笑)

古家:でも振り返って、そんな中で僕を選んでくれて嬉しい(笑)っていうね(笑) なぐさめにつながっているんじゃないかな?(笑)そんなストーリーの中で、素敵な歌が散りばめられていて….。 塚地さんはこの映画を観て、教訓ではないけれど何か人生のエピソードが増えましたか?

塚地:僕ももう50代なんで、周りでも天国に行ってしまったかたもいらっしゃるので、自分の中で死というものが若い頃よりは近くにあるなとは感じるんですが、後悔無く楽しく生きなきゃいけないと思わせてもらいましたし、何より結婚したいなと思わせられました(笑) 夫婦って素晴らしいんだなって。 僕の周り、結婚は人生の墓場って言う人も多いんですよね(笑)もちろん長く結婚生活をしていけば多くをしゃべらなくなったり、人生のパートナーだけど一緒に楽しめてるのかなっていう時もあると思うんですが、やっぱりそこには絆や愛があるんだっているのを教えてくれる、この映画を観終わったら旦那さんや奥さんに少し優しくなりそうな、気がしますね。

古家:夫婦やカップルで観に来て、特に最後のシーンを観たら、「このあとちょっと一緒に一杯飲みに行く?」みたいな流れになりますね、きっと。

塚地:旦那っていいものだなって思いますね。僕、独身ですけど(笑)

古家:結婚式とかセレモニーってすごく大事なんだって、この映画を観て知りました。

塚地:結婚式とかセレモニーって女性はしたいって思っても、男性は別にあまりしなくてもいいって思う人が多いですよね。でもこれを観たら大事なんだなって思いますね。

古家:面倒だったり時間はかかるけれど、セレモニーだからこそ得られる経験や喜びをこの映画から感じましたね。

塚地:この二人が過去を遡って、初めての出会いのシーンが笑えるんですよね。そこから始まってだんだん恋に堕ちていくっていう流れがキュンとする。 昨今、学園ものはイケメンと美女っていう部分にキュンキュンするところがありますが、この二人のその時代を、この二人がこの年齢で演じながらのキュンキュンは笑えると言うか…。この哀愁は若いコには出せない、出会いを見て笑っていただいて最後に向けて楽しんでもらえたらって思いますね。2人の表情が物語ってます。

古家:僕は映画のパンフのための詳細を書かなくてはいけなかったので、どのシーンでどの音楽が流れたのかっていうのを中心に聴いて書いていたので、是非曲に耳を傾けて欲しいって思っています。イ・ジョクさんの『良かった(2007年)』と『嘘嘘嘘(2013年)』の2曲は、K-POPアイドルや俳優さんがファンミーティングでよく歌うんです。聴いて頂いたら耳馴染みのある曲だと思うんですが、特に『良かった』っていう曲は元々イ・ジョクさんが奥さんにプロポーズした時に作ったプロポーズソングなんです。これがどこで流れるかを是非観ていただきたいです。 すごく意味のある歌なのでどのシーンで出て来るか….。 この歌が流れるシーンがすごく好きでしたね。歌を知っておくと「この歌、ここで流れるんだ。センスある!」っていう瞬間がいくつもあって。  韓国はミュージカル映画って今まであまり無くて、2本くらい、そのうちの1本がこの作品なんで本当に貴重な作品だと思います。

見どころを丁寧に伝えた二人は最後の挨拶前、フォトセッションを行った。 マスコミによる撮影のあとに来場者向けフォトタイムも特別に設けられた。 来場者からギャルピースやハートなどポーズ指定の声が飛び、かなり照れながらも楽しそうにノリノリに応じる二人だった。

塚地:本当に観て良かったと思う一本です。いつの日か僕もこういう映画に呼ばれるようになりたいですね。いつか韓国映画に出られるような男になるよう精進していきたいです(笑)

古家:今回は韓国文化院さんの協力のもと「コリアン・シネマ・ウィーク 2023プレゼンツ」ということで一足早く今日はプレミア上映会に参加させていただいております。今回は音楽の解説をさせていただいて、何度も何度も観ていると主人公に感情移入してしまうというか、自分がもしこうなったらどうなってしまうんだろうって考えさせられホロっとする瞬間が何度もありました。 ご覧になってそういった気持ちに少しでもなっていただけたら、今日の私たちの写真を添えて(笑)多くのかたに良かったよと是非ご紹介いただけたらと思います。今日はありがとうございました。

映画『人生は、美しい』の魅力をネタバレに配慮しながら、たっぷり伝えた二人だった。


【韓ペンオリジナル レビュー】

本作序章部分、リュ・スンリョン演じる夫・ジンボンの不愛想さには、観ていて多少腹がたってくる。妻の余命が短いことを知っても、優しさやいたわりを見せることもない。しかし、話が進むにつれそれが何故なのかが少しずつわかって来る。笑顔すら見せなかった夫の表情が妻と共に旅を続けるうちに、どんどん変化していく。あんなに憎たらしく感じた 夫・ジンホンがどんどん愛おしく感じて来る。 妻が「初恋の人に会いに行きたい」と言う…夫にとっては面白いわけがない。 夫としてのプライドから表には出せないものの、内心かなり嫉妬してしまう。 その辺の心の葛藤を名優リュ・スンリョンはしっかりと感じさせてくれる。

死と向き合う映画がミュージカル仕立てだと知った時、正直驚いたが、「この曲はこの映画の為に書かれたのでは?」と思ってしまうくらい場面にピッタリな歌詞の名曲を要所要所で味わうことが出来る。そして感動を一層増してくれる。

 ヨム・ジョンア演じる妻・セヨンが自分の余命を知ってからそれを前向きに捉え生きる姿は、観る側に感動と勇気を与えてくれた。余命を知り愕然とする姿、毎日に疲れた姿、初恋の人に会えるかもと希望を抱きまるで少女のように生き生きとする姿、自らの人生や姿を思わず振り返ってしまう。

セヨンの初恋の相手・ジョンウを演じる オン・ソンウ(元 Wanna One)は純朴な青年を見事に演じている。ソンウのファンならちょっと嬉しいシーンもあるのでお楽しみに! 妻・セヨンの若き日の姿を演じるパク・セワンはいつ見ても制服の似合う清純な可愛らしさと確かな演技でセヨンの大切な青春の1ページを美しく伝えてくれる。

時代設定も数十年前、イマドキの作品とは異なり決してあか抜けた映像ではないかもしれないが、それが何故かやけに心地よい。 そこには“愛”がたっぷり詰め込まれている。夫婦愛・親子愛・友情…この作品からは色々なカタチの愛を感じることが出来る。

また、限られた時間の韓国観光旅行では なかなか行くことが出来ない土地の美しい風景を本作品では色々楽しむことも出来る。笑いと、涙、そして笑い泣きしてしまう… 本当に素敵な映画が『人生は、美しい』だ。他人だった二人が 長年一緒に夫婦として暮らして来れた根底には“愛”と“思いやり”があるのだということに改めて気づかせてくれる。

text & photo(トークショー):Chizuru Otsuka

photo (映画場面&ポスター):© 2022 LOTTE ENTERTAINMENT & THE LAMP All Rights Reserved.


『人生は、美しい』(原題:인생은 아름다워)

© 2022 LOTTE ENTERTAINMENT & THE LAMP All Rights Reserved.

STORY

© 2022 LOTTE ENTERTAINMENT & THE LAMP All Rights Reserved.

典型的な亭主関白の夫・ジンボンと、思春期真っただ中の生意気盛りな息子と娘。そんな家族に時にうんざりしながらも、健気に尽くしてきた平凡な専業主婦のセヨン。 だがある日、自分の命が残りわずかと知らされる。 突然の余命宣告に激しく動揺したのも束の間、何かが吹っ切れたセヨンは、自身のおそらく最後となる誕生日プレゼントに、学生時代の初恋相手との再会を熱望。よりによって彼を一緒に探してほしいと夫に頼み込み、夫婦の奇妙な最後の旅が始まるのだが――。

© 2022 LOTTE ENTERTAINMENT & THE LAMP All Rights Reserved.
© 2022 LOTTE ENTERTAINMENT & THE LAMP All Rights Reserved.
© 2022 LOTTE ENTERTAINMENT & THE LAMP All Rights Reserved.
© 2022 LOTTE ENTERTAINMENT & THE LAMP All Rights Reserved.

いまどき珍しいほどに不愛想。日本で言う“昭和的な夫”を体現するのは、『7番房の奇跡』(14)、『エクストリーム・ジョブ』(20)などでヒットを飛ばす国民的俳優リュ・スンリョン。シリアスからコメディまで硬軟自在の高い演技力で、今回も不器用ゆえに愛おしいジンボンをユーモラスに演じ切る。

リュ・スンリョン © 2022 LOTTE ENTERTAINMENT & THE LAMP All Rights Reserved.

死期が迫るほどに美しく輝きだす魅力的なセヨンに扮するのは、ドラマ「SKYキャッスル~上流階級の妻たち~」(19)、『完璧な他人』(19)などに出演する実力派俳優ヨム・ジョンア。近年は日本でも人気バラエティー番組シリーズ「三食ごはん」で注目される彼女が、ときにコミカルに感情豊かなセヨンを熱演し共感を呼ぶ。

ヨム・ジョンア © 2022 LOTTE ENTERTAINMENT & THE LAMP All Rights Reserved.


若かりし頃のセヨンの初恋相手ジョンウ役には、大人気K-POPグループ“Wanna One”出身のオン・ソンウ。『ソウル・バイブス』(22)など俳優としても注目され、現在兵役中の彼にとって、本作は実質記念すべきスクリーンデビュー作となる。

オン・ソンウ © 2022 LOTTE ENTERTAINMENT & THE LAMP All Rights Reserved.

他にも若き日のセヨン役にパク・セワン、若き日のセヨンの親友・ヒョンジョン役にシム・ダルギなどフレッシュかつ個性的なキャスト陣が揃う。

パク・セワン © 2022 LOTTE ENTERTAINMENT & THE LAMP All Rights Reserved.


監督は『国家が破産する日』(19)をヒットに導いたチェ・グクヒ。『完璧な他人』、『エクストリーム・ジョブ』などの脚本を担当したペ・セヨン、そしてソン・ガンホ主演の『タクシー運転手 約束は海を越えて』(18)の制作会社=ザ・ランプがタッグを組んだ本作は、韓国なら誰もが知る懐かしのヒット曲が続々登場し、俳優陣が歌い踊るミュージカル映画でもあり、セヨンの初恋相手探しの旅にポップな彩を添えていく

© 2022 LOTTE ENTERTAINMENT & THE LAMP All Rights Reserved.

監督:チェ・グッキ (『国家が破産した日』)
出演:リュ・スンリョン、ヨム・ジョンア  パク・セワン、オン・ソンウ、シム・ダルギ、ハ・ヒョンサン、キム・ダイン
特別出演:チョン・ムソン、パク・ヨンギュ、キム・ヘオク、シン・シネ、キム・ジョンス、コ・チャンソク、ヨム・ヘラン、キム・ソニョン、リュ・ヒョンギョン
2022年/韓国/韓国語/123分/5.1ch/シネスコ/原題:인생은 아름다워/字幕翻訳:本田恵子/提供:ツイン、Hulu/配給:ツイン G
© 2022 LOTTE ENTERTAINMENT & THE LAMP All Rights Reserved.

11月3日(金・祝)シネマート新宿、ヒューマントラスト有楽町他 全国順次ロードショー