2024年11月15日(金) シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷 他 全国公開となった 映画『対外秘』は 韓国で公開されるやいなや世界的スーパーヒット映画『THE FIRST SLAM DUNK』を抑えて、初登場No.1を記録した大ヒット作品。
本作品は1992年の韓国・釜山を舞台に、「大韓民主党」の公認候補を約束されたヘウン(チョ・ジヌン)が選挙に向けて意気揚々としているところから始まる。 「不正に手を染めない民主主義」を謳い 選挙活動に励んでいる。 釜山政界の真の実力者で、国家権力とも繋がっている黒幕のスンテ(イ・ソンミン)の後援を信じ当選を確信していたヘウンに、耳を疑うような情報が舞い込む。 スンテはヘウンの公認を外し、パク・ヨンシクを公認候補に据えたという…。 当選をめざし巻き返しを図るため、ここからヘウンの人生を懸けた模索が始まる。
ヘウンは高校の同窓生で市庁の釜山広域市総合建設本部長を務めるムン(キム・ミンジェ)に、金と引き換えに極秘文書(対外秘)の“海雲台開発計画書”を密かに撮影させる。そして ヘウンは地元を牛耳るギャングのピルド(キム・ムヨル)に 一攫千金の情報と引き換えに 自分への協力を持ち掛ける。ピルドは開発会社のチョン社長(ウォン・ヒョンジュン)を引き込み、ヘウンへの選挙戦用資金提供が約束された。
しかし、ヘウンの動向を察知し危機感を感じたスンテは選挙管理委員会のパク課長を脅迫し、投票用紙の原本を流出させることで追い打ちをかけ、見事パク・ヨンシクを当選させることに成功する。その上、“海雲台開発計画書”の内容を変更し、チョン社長が事前情報から買い占めた土地を価値の無いものにしてしまう。
名誉も信頼もお金も全てを失ったヘウンは、真の黒幕・スンテを追い詰め、失ったものを取り戻すために動き出す……..
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韓国の政治を扱う作品は、時代背景や韓国の政治組織に多少知識が無いとわかりにくかったり、混乱してしまうことがあるが、この作品は1つの政党内でのできごと、韓国の釜山という一定の地域が舞台設定となっていてとてもわかりやすい。 また、つい最近日本でも 自民党総裁選や衆議院選挙などが行われたこともあり、私たちにとっても記憶に新しい様子が色々見られる。 公認選出、公約や選挙活動など、重なる部分もいくつも見られ、本作品が今 公開されるのはまさにナイスタイミング!
「普通に暮らしたい」と望む妻の思いに反し、家庭をあまり大切にしないところからも、実際に政治家になった際には公約を実行できる器なのかわからないヘウンだが、とにかく当選するため選挙活動では必死にクリーンな政治を目指すと公約を掲げる。 しかし落選し、信じていたものから裏切られたことを知ることで、どんどん悪に手を染めていく。 映画の始まりのころは、一見強気に振る舞いながらも 実は気の弱い性格の持ち主だということをその表情から感じさせるが、話が進むにつれ少しずつ悪の表情に変化していく。 しかし、やはりその本来の弱い性格は隠せないことを、ところどころでヘウンを演じるチョ・ジヌンが見せる “汗の演技”から感じることができる。 冷静な表情を浮かべようしているものの、こめかみにすっと流れる汗には、強い姿を見せながらも緊張が隠せていないヘウンの弱い面を表している。
ヘウンが上に上に昇り詰めたい気持ちを示すような、彼の住む貧しい住居に続く長い急な階段が政治家への厳しい道をも 物語っている。 この階段は果たして天国への階段なのか?地獄への階段なのか??
お金も腕力も持ち、部下から恐れられる存在の地元ギャング・ピルドだが、時々ふっと見せる人間らしさをキム・ムヨルが浮かべる細かい表情から伝えてくれる。 成りあがりたいという強い欲と、そのために人を裏切り、人から裏切られることがあたりまえになっていることに感じる寂しさ、むなしさ、切なさを見事に表現している。
イ・ソンミンは、堂々とし一切うろたえる姿を見せることなく、チャンスを虎視眈々と狙うスンテを演じる。 悪知恵を働かせ、自分のために人を利用し、潰すことに微塵のためらいもない裏の権力者・冷酷なスンテを憎々しく演じている。 自分の大切なものを失うことなく、自分の意のまま・欲のままに人を操作する姿を格別の演技で魅せてくれる。
本作品は豪華俳優陣の名演技と共に、わかりやすいのに単純ではないストーリー展開、騙し騙され誰が最終的に勝ち取るのか….。スピーディーに進むストーリー展開に息つく暇もない!観客はスクリーンに釘付けになること間違いなし。 そのほかにもファッション、途中流れる音楽にもノスタルジーを感じることができるなど、様々な魅力を持つ作品となっている。 誰が生き残り、チカラを手に入れることができるのか? 最後の最後まで目が離せない。
なお、本作品は11月15日(金)の公開に先駆け、11月3日・角川シネマ有楽町にて第37回東京国際映画祭特別上映部門作品<映画『対外秘』ジャパンプレミアイベント>として上映された。 上映前には チョ・ジヌンとキム・ムヨル、イ・ウォンテ監督の3名が舞台挨拶に登壇し、映画の緊張した雰囲気とは全く異なる大変和やかなトークを弾ませ、観客を楽しませた。
Review: Chizuru Otsuka
Photo: ⓒ 2023 PLUS M ENTERTAINMENT AND TWIN FILM/B.A. ENTERTAINMENT ALL RIGHTS RESERVED.
★韓ペンオリジナルレポ ~ 映画『対外秘』ジャパンプレミアイベント ~
レポはこちら➡ https://kanpen.asia/archives/81897
映画『対外秘』
【Story】 1992年、釜山。党の公認候補を約束されたヘウンは、国会議員選挙への出馬を決意する。ところが、陰で国をも動かす黒幕のスンテが、公認候補を自分の言いなりになる男に 変える。激怒したヘウンは、スンテが富と権力を意のままにするために作成した〈極秘文書〉を手に入れ、チームを組んだギャングのピルドから選挙資金を得て無所属で出馬する。地 元の人々からの絶大な人気を誇るヘウンは圧倒的有利に見えたが、スンテが戦慄の逆襲を仕掛ける。だが、この選挙は、国を揺るがす壮絶な権力闘争の始まりに過ぎなかった─ ─。
【監督】
イ・ウォンテ 『悪人伝』
【出演】
チョ・ジヌン 『工作 黒金星と呼ばれた男』『警官の血』
イ・ソンミン 『KCIA 南山の部長たち』『復讐の記憶』
キム・ムヨル 『悪人伝』『犯罪都市 PUNISHMENT』
2023 |韓国|韓国語|116分|カラー|スコープ|原題:대외비(英題:THE DEVIL’S DEAL)|5.1ch|字幕翻訳:鷹野文子| 映倫区分:G
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