【ライブレポ】 ~KoN~ 2年ぶり単独公演『情熱のバイオリン 2016 』開催!魅力の全てを披露。Apeace J.DもMC&ゲスト参加。

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韓国初のジプシーバイオリニストKoN(コン)が2016年7月26日、 2年ぶりの単独コンサート「KoN情熱のバイオリン 2016 ジプシーバイオリンwith カルテット」を 渋谷区文化総合センター 大和田伝承ホールにて開催した。

KoNが奏でるジプシー音楽は、ジプシー民族たちの日々から生まれる悲哀溢れる せつない音階に、クラッシックやジャズ・・・さまざまな音楽をKoN独自の感覚で取り入れ融合させた、 “ Nuevo Gypsy(新しいボヘミアン)”というKoNオリジナルのジャンル。 ジプシー音楽は、定まった すまいを持たず、色々な土地をさまよい 日々の暮らしを送るジプシーの哀しみや苦しみだけが表現されているのではなく、そんな生活の中にも楽しさや幸せがあることも表現されているということをKoN自身が見出し、ジプシー音楽に新しいジャンルを掛け合わせることで その様々な感情をより深く表現することが可能になった。

昨年9月の “金沢 JAZZ STREET2015”以来、10ケ月ぶりとなる来日公演だが、今回 日本では2年ぶりの単独コンサートゆえKoN自身この公演への期待や思いはとても大きく、自分自身の魅力の全てを見せたいと、公演直前におこなったインタビューで熱く語っていた。

会場となった 大和田伝承ホールには、多くの人が訪れ、KoNの登場を待ちわびていた。
ピアノ・ギター・ベース・パーカッションの4人が1曲目、日本デビューアルバムのタイトル曲だった『Nuevo Impacto』を演奏し始めるとすぐに、白地に黒い大きな柄の入ったシャツに白のパンツという、シンプルながら洒落た姿でKoNがバイオリンを弾きながら登場した。
身長188cmの大きなからだを美しく揺らしながら奏でるバイオリンからは、様々な感情が伝わってきた。

2曲目はKoN自身も出演した日本のドラマ「赤い糸の女(※東海テレビ)」の挿入歌としてたくさんの人に愛された『時の川』。 心地よい優しい音色は、日常の喧騒や疲れた心身を清らかに洗い流してくれるようだった。 演奏が終わると大きな拍手が起こった。
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KoN「今日は色々な曲を準備しました。お楽しみください。そして今日、スペシャルゲストとMCをやってくれるApeaceのJ.Dくんです。」
と、ゲスト&MCを担当するApeace(エーピース)のJ.D(ジェイディ)を紹介した。 Apeaceは2011年5月から日本を拠点に様々な活動をおこなっている韓国の12人組ボーイズアイドルグループ。 J.Dは2013年4月より途中加入した。 来日当初、15歳という幼さだったが、絶対音感を持ち、ピアノや様々な楽器を完璧に弾きこなし、こどもの時より おこなってきたクラッシックやロックなど様々な音楽活動遍歴が注目となった。 また、トロット(韓国の演歌)歌手としても小さい頃から活動してきたという 全く想像もつかない面も持ち合わせる不思議なアイドルだ。 今回のこの公演で“IQ200の K-CLASSIC貴公子”の異名を持つKoNと、音楽だけでなく日本語をあっという間に使いこなすことができるようになるなど多彩な才能を持ち合わせる18歳のJ.D、ふたりの天才がどのようなコラボレーションを見せるのか 公演前から大きな話題となった。
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J.D「ApeaceのJ.Dです。 今日は初MC挑戦としてKoNさんの公演に参加させていただき、とても嬉しいです。未熟な部分もありますがよろしくお願いします。」
挨拶ののち、J.DはKoNが今 演奏した2つの曲の説明を まずおこなった。

J.D「KoNさんは、ミュージカル俳優もこなすし、作詞作曲もできるし、顔もステキだし、バイオリンも上手で・・。 そして演技もなさるそうですが、演技を行うのはどんな感じでしたか?」
KoN「演技をしながらも音楽のアイディアが浮かんだりしました。 特別な経験でしたね。」

次の曲はKoN自身がとても好きな曲、 ジャズなどスタンダードナンバー 3曲を披露した。 KoNのステキな歌声も聴くことができた。 KoNの声はとても耳馴染みのよい声質で、抑えて歌う時も、声を張って歌うときも 本当に魅力溢れる歌声を聴かせてくれる。 KoNの歌声と バイオリン、そしてカルテットの奏でる音が合わさってなんとも贅沢で上質な気分を味わせてくれた。 興奮した観客からは、しばらく拍手が鳴り止まなかった。

J.D「次は韓国ドラマのOSTとして使われた曲です。 クォン・サンウさんと チェ・ジウさん主演“誘惑”(※SBSドラマ)の『Fatal Invitation』、次はとてもヒットしているドラマ ”また!? オ・ヘヨン(※tvN ドラマ)“の挿入歌『Kiss of Gypsy』です。」
KoN「“誘惑”は、クォン・サンウさんとチェ・ジウさんが 不倫をするという内容のドラマですが、『Fatal Invitation』は この二人が見つめ合うシーンで流れた曲です。 なので僕の友達は この曲を 不倫の曲…って言うんですよ(笑)  そしてもう一曲『Kiss of Gypsy』は、このドラマの主人公 オ・ヘヨンが ダンスをするシーンで 2分30秒も流れています。」
と、KoN自身からエピソードも付け加えられ、曲への期待感はますます大きくなった。
KoNのしなやかで長い指は確実に弦をおさえ、みじんの狂いもなく艶やかな音を作りだしていく。 『Fatal Invitation』は、甘い中にも どこか禁断の愛に溺れていく心のとまどいを感じることができる音色だった。
また、『Kiss of Gypsy』は、優雅な中にも力強さ、情熱がこめられていた。 今回の公演のタイトル“情熱のバイオリン”は、この曲を 1番のイメージにしたのではないかとさえ感じた。

ここで再びMCのJ.Dが登場し、韓国でたくさんの人々に長い間とても愛されている曲、イン・スニの 『ガチョウの夢』をデュエットした。 KoNと J.Dは、KoNのタイトなスケジュールのため この公演の直前にしか会うことができなかったが、この曲を準備するために何度も何度も連絡を交わし、パート決めなどを綿密におこなった。 ふたりともメガネをかけていたり、外見もなんとなく似ているが、声質もとても合っていた。そしてすばらしい声量で歌いあげていた。 高いパートをKoNが、低いパートをJ.Dが担当していたが、お互いの声が驚くほど 見事に混ざりあい、あまりにも美しいハーモニーを織りなしていた。  “自分の夢信じて、夢を叶えるためならば運命という壁も乗り越えられる”という意味が込められている歌詞には 今後ますます飛翔していくふたりの、これからの未来への夢や希望や決意を重ねあわせているかのようで、最高の選曲だった。
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歌い終わると割れんばかりの拍手喝采がしばらく鳴り止まなかった。 KoNは満面の笑顔をJ.Dに向けた。 この笑顔が若干18歳ながら見事に大役を務めたJ.Dへ、KoNからの高い満足度と評価を表していた。 J.DはそのKoNを見て、安堵の表情を浮かべた。
J.D「音楽の大先輩のKoNさんと共演できて、二人で歌うこともできて嬉しいです。 昨日初めて(直接)会ったんですが、KoNさんは年下の僕をとてもいたわってくれて・・・。なのでホッとしながら準備することができました。」と、18歳らしい素直な感想を述べた。

KoNが次の曲の準備をしている間、しばらくJ.Dのソロステージとなった。
J.D「今年の3月24日に発売した、 僕が作詞・作曲をした Apeaceの 『君というプレゼント』を ピアノの弾き語りでお聞かせします。そのあと、続けて・・・みなさん、きっとご存知の 僕が1番尊敬している先輩の演歌を・・・(笑) クラッシック風に歌いたいと思います(笑)」
『君というプレゼント』はApeaceとして歌うときとはまた異なる雰囲気で、いつもより少しスローテンポで心をこめて優しく語りかけるように歌っていた。 そして雰囲気は一変。 見事にジャジーにアレンジした、日本国民ならきっと誰でも知っている演歌を披露した。 小さい頃からトロットをやっていて、いまでも1番やりたいジャンルだと語るJ.Dの演歌は見事な こぶしまわしと、タメで、客席を大いに盛り上げた。 そして演歌からまた一変して シューベルトの晩年の作品『即興曲 OP 90‐2』を聴かせた。 波のような華麗な音符の並び、 やわらかな主部と、力強い中間部の曲の変化を、なめらかな指の動きで ディナーミクをきかせ、見事に表現した。 会場からは大きな拍手が起こった。

ここで衣装チェンジを終えたKoNが再び登場した。 メガネを外し、白い上下、水色のストールを まとう姿は、貴公子そのものだった。 KoNの優美な外見が より ひきたっていた。 夢の中に出てくる王子様のような麗しい姿のKoNに惚れ惚れとした客席からは ため息のような なんとも言えない声が あちこちからあがっていた。 ここでKoNから来場者へのプレゼントとして 、1名を選び、ステージにあがってもらって バイオリンと歌でプロポーズのようなことをおこなうという夢のような企画がおこなわれた。
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選ばれた人にバラを一輪プレゼントしたあと
KoN「僕が目を見つめながら歌いますから、近くに寄ってもびっくりしないでくださいね(笑)」
と茶目っ気いっぱいに語り、KoN自身がとても愛している映画のOSTを 時に見つめ、時にそばに寄り添い 歌い聞かせた。 恋愛映画の王道のOSTであるこの曲は、あまりにもロマンティックで、KoNの甘いソフトな声で歌うと 選ばれた人だけではなく、客席中がとろけてしまいそうに 魅了された。 コーナーが終わると、
J.D「僕がKoNさんに惚れてしまいそうでした。 すごくステキでした!」
と、そばで見ていたMCのJ.Dも少し顔を赤らめ、興奮気味に語っていた。

KoNの魅力が詰まったこの公演もいよいよ終盤を迎えた。
KoNのオリジナル曲、情熱的な『街頭祭り(Nuevo Gypsy)』が始まると、音符に合わせて客席から手拍子が起こった。 早いテンポのこの曲では 街の賑やかさや様々な人々の表情、様子などが、バイオリンのあらゆる奏法をつかって力強く表現された。
ついにラスト2曲となってしまった。
最初に弾いたのはハンガリーを舞台にした有名な曲。 もともとアップテンポのこの曲だが、アップテンポな部分は、よく耳にする他の演者による演奏よりもはるかに 速く、それなのに、わずかな狂いもない確実な音の流れがあまりにも気持ちがよかった。 KoNが聴かせる最高の アゴーギグを十分に堪能することができた。 圧巻の演奏に客席からは大歓声が起こった。
続いてハンガリーの酒場などから生まれたハンガリー独特のリズムの速・遅と、旋律を聴かせる楽曲をもう1曲披露した。 この曲は 酒場に集まった若者を兵隊に誘い、入隊させるために踊ったのがはじまりと言われているが、これを耳にし 舞いを見た者たちは、 この力強い曲と ものすごく速いスピードで、迷うことなく気持ちを掴まれていっただろうと想像した。 曲の最後の優しくポンっと弦を弾く部分がとても印象的だった。
KoNは同じ曲の中でも、曲の表現しているものを顔の表情でもよく表していた。 力強い表情、せつない表情、やさしい表情、ちょっと茶目っ気のある表情・・・曲の雰囲気にあわせ数えきれないほどの豊かな表情を浮かべ弓を動かしていた。
最後の2曲を弾き終わると、大きな拍手に包まれながらKoNはステージをあとにした。
素晴らしい演奏に感動したファンからは アンコールを求める大きな手拍子が鳴り止まなかった。
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アンコールへ すてきな笑顔とともに登場した
KoN「僕は韓国でミュージカル俳優をしていました。 なので とても有名なミュージカルの曲を準備しました。」と言い、歌い始めた。 目をつぶり、感情の全てを込め、素晴らしい声量と 艶やかな声でその名曲をますます感動的なものにしていた。 KoNはバイオリンの美しい音色を聴かせるだけではなく、声でも美しい音色を聴かせることができる、音楽をやるために生まれてきた まさに神童だった。

再びゲスト&MCを務めた J.Dや、バックを務めたバンドメンバーも登場した。
J.D「今日は 楽器や音楽に携わるステキな公演に出ることができて、そしてKoNさんに会えて 本当によかったです。 ありがとうございました!」
KoN「最後の曲は僕が1番好きな偉大な作曲家の曲です。 今日はいらしていただき本当にありがとうございました! J.Dくんも ありがとう! みなさま、また是非お会いしましょう。」
ラストは “タンゴに様々なものをかけあわせて作られた曲。 センチメンタルな雰囲気に、強いリズムとビートというエッセンスを混ぜ込んでいる。 KoNは ジプシー音楽に様々なジャンルを融合させているが、この曲はタンゴに様々なジャンルを融合させて作られたもので、そんな音楽への姿勢部分がKoNの心を掴んだのかもしれない。 この曲は、タンゴでよく見受けられるリフが続いたあと、ジャズやロックなどでよく見られるような変化をとげていくのが特徴だ。
あまりにも素晴らしいとしか言いようのないKoNのバイオリンに、ただただ感動した観客からは 大きな拍手喝采が起こった。
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公演終了後は 会場で販売したCDやグッズにKoN、J.Dそれぞれが サインを入れ、ファンとの交流をはかった。 先日のインタビューで、KoNが「今回は 韓国から準備してきたステキなグッズがあります。」と言っていたKoNの描いたイラスト入りのかわいいエコバッグや、CDにサインを入れながら、ファンからのリアルタイムでの熱い感想を本当に嬉しそうに聞いていた。 満足気な表情でひとつひとつ丁寧にサインしていた。
また、サイン会が終わると、ファンひとりひとりを握手でお見送りした。先ほどまでの力強さとは異なる、ソフトでやさしいKoNの振る舞いに、ファンはますますKoNの魅力にハマっていった。
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KoNが「自分がいまできる全てをお見せする。」と宣言していたこの公演は、KoNの魅力と才能が詰まりすぎていてあまりにもラグジュアリーな気分に誘ってくれた。 満足度200%の公演をおこなった。 この公演のあとは、ヨーロッパにて長期間、演奏活動をおこなったのち、11月以降は韓国で次のアルバムの制作に専念するそうだ。 こんなに素晴らしい公演を見せたKoN。 性格はいたっておだやかながら、ゆるがぬ強い意思や、音楽への自信を持ったKoNの次回作が楽しみで仕方ない。 新しいアルバムをひっさげて、来年是非また日本でも演奏を聞かせてほしい。
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