
【韓ペンオリジナルレポ】 ※写真はすべてオフィシャル提供(女優D キム・ジュヨン回)
2025年6月24日(火)から6月29日(日)まで「演劇「『楽屋』〜流れ去るものはやがてなつかしき〜」韓国人キャスト来日版が 博品館劇場(東京) にて上演された。
演劇『楽屋』は 日本の現代演劇の巨匠と称された清水邦夫の代表作であり、役者ならば一度は挑んでみたい名作戯曲。 1977年に執筆されて以降、日本で累計上演回数が最も多い作品とも言われている。
舞台に登場するのは女優 4人だけ。そして通常の舞台のような役名は無く、女優A、女優B…となっている。なぜならこの作品が伝えたいのは個人の話ではなく 「女優」が持つ夢や苦悩や生き方。 壮絶な闘いを繰り返しようやく勝ち取った役柄、そしてそれを上手く演じるため懊悩を繰り返す「女優」。一方では自分の思い描いているような活動ができていないことに悶々とする「女優」。成功した者、成功に辿り着けない者…。それぞれ心の中に大きな悩みを抱えている。
女優という職業は一見華やかな世界だが、凄まじい葛藤がある。演劇『楽屋』は、女優が「女優」を演じるから面白い。「女優」が持つ悩みや感情が痛いほどわかるからこそ、素晴らしい表現で魅せてくれる。

舞台はチェーホフの名作「かもめ」上演劇場の楽屋。化粧台に向かう女優AとBはプロンプターとしてしか活動できていないことに不満や悔やしさ、失望を抱いている。幕間に楽屋に戻った女優Cは「かもめ」の主役ニーナのセリフを練習すると再び舞台へ向かう。

そんなCが羨ましく、妬ましく思っているAとB。 二人は舞台の上で演じる日を夢見ながら、チェーホフの「かもめ」や「三人姉妹」、シェイクスピアの「マクベス」などの古典戯曲を練習する。この戯曲のセリフに絡め辛辣な言葉や表現で、燃え滾るような嫉妬心や悔しさが表現される。 AとBのやりとりはユーモアたっぷりのセンスのよい言葉がテンポよく飛び出す。笑わせながらもチクリチクリと刺し続ける。舞台出演のために熱心に練習し、支度しながら、長い待ち時間を過ごすAとB。しかし彼女たち二人は願い虚しくこれからも舞台に立つことはできない。 話が進むにつれ、観客はその理由に少しずつ気づくことになる。

そんな楽屋に枕を抱えた女性が突然現れる。彼女もまた「女優」のD。Cの演じているニーナをやりたい気持ちから精神を病み入院していたDは、女優Cに「ニーナは自分がもらった役。もう退院したからその役を返して欲しい」と迫る。実際は、Dは妄想で自分がニーナ役に選ばれたと信じ込んでいるだけ。でもあまりにも執拗に役を返せと迫るDに危機感を感じるC。 役を取り戻したいと言い張るDと、もみあいになり…。

とにかくセリフの量がハンパない。そして単語を羅列するセリフが多数出てくる。ところが出演女優たちはそんな難度の高いセリフをなんなくこなしている。それもそのはず、この秀逸な演技を見せたのは韓国にて映画やドラマ、舞台で活躍する演技派女優陣。 このメンバーがここに会するなんて!と驚くような豪華な顔ぶれ。
男役専門のプロンプター「女優A」を演じたのは日本で韓流ブームを巻き起こした大ヒットドラマ「冬のソナタ」でペ・ヨンジュンの母親役を演じ、「善徳女王」「ベートーベン・ウィルス〜愛と情熱のシンフォニー」といった人気作品に出演したソン・オクスク。ショートカットでチャキチャキとしたキャラクターをはつらつとした演技で楽しませながらも、しっかりと「女優A」の持つせつない心情を伝えていた。

「女優B」を演じたのは2008 年、 映画「追撃者」のミジン役で名を上げ、映画「キム·ボクナム殺人事件の顛末」でより広く知られる役者となったソ・ヨンヒ。 くるくる変わる表情で陽気な「女優B」を愛らしく演じ、張り詰めた空気を和ませてくれた。

「女優C」を演じたのは「応答せよ」シリーズではあたたかい母親役、「星から来たあなた」ではセレブな奥様役を演じ、幅広い演技力で魅せる イ・イルファ。主役ニーナとして舞台に立つ「女優C」の緊張やプレッシャー、常に持つ座を奪われることへの恐怖心から生まれる激しい姿を見事に表現していた。

「女優D」は6月24日~27日に出演したキム・ジュヨン、6月28~29日に出演した ハム・ウンジョンのWキャストで演じられた。
ハム・ウンジョンは子役活動を経て2009年にアイドルグループ“T-ARA(ティアラ)”のメンバーとして歌手デビュー、ハツラツとしたパフォーマンスと時折見せる女の子らしい表情で大人気となった。ドラマ「ドリームハイ」「プラハの恋人」などにも出演し女優としても活躍中!
キム・ジュヨンは舞台、ミュージカル、ドラマなどで常に優れた演技力を披露する注目のライジングスター。

ハム・ウンジョンと キム・ジュヨン は、精神を病む弱々しい姿とそれに反して役を返してもらうことに執着し激しく迫る二面性を持つ「女優D」で、それぞれ抑揚のある演技を見せた。
「女優」たちの人生や感情に重ねながら、観客は自らの生き方を振り返ることができる作品。ラストシーンでは心のよりどころが少し見つかったような気がした。1977年の作品だが、韓国版では現代に時代背景を移行して、より共感しやすい馴染みやすい作りになっている。
また、今回の日本公演では、2023年の再演時に話題となった女優陣が集結し、磨き上げられた演技を披露した。

キャストたちは、小道具も器用に使いこなし、客席が思わず「おぉ!」と感嘆の声を発してしまうほど、のナイスプレイを見せるシーンも見どころの一つとなった。セリフはすべて韓国語だが、日本語の字幕があり、韓国語がわからない人でもしっかりと内容を把握することができるように配慮されていた。
約50年に渡り、さまざまな役者によって演じられてきた演劇『楽屋』。日本で生まれた作品だが韓国でも共感を呼び、広く支持を得ている。今回の公演は残念ながら上演終了となったが、いつかまた日本で上演される際には是非、劇場に足を運んで女優たちの情熱と葛藤する姿から何かを感じてほしい。
text : Chizuru Otsuka
photo : オフィシャル提供 (女優Dはキム・ジュヨン回)
<あらすじ>
“そう、私たちは女優よ”
とある劇場の楽屋。舞台ではチェーホフの名作「かもめ」が上演されている。
化粧台に向かう女優AとBは、身支度に余念がない。
幕間に楽屋へ戻った女優Cは、ニーナのセリフを練習すると、再び舞台へと向かう。
そんなCが気に入らないAとBは、自分たちが本当は演じたかった古典作品の役を演じながら時間を過ごす。
二人の時間は、女優Dの登場によって破られる。精神を病み入院していたDは、Cが演じるニーナは自分の役だと信じている。公演を終え、楽屋に戻ってきたCはニーナ役を返してほしいというDの言葉に当惑する。
やがて二人の衝突は思いもよらない悲劇へと向かっていくのだが…。
作:清水邦夫
劇作家、演出家、小説家。新潟県生まれ。早稲田大学演劇科在学中に処女戯曲『署名人』(1958)を発表。岩波映画入社後、ドキュメンタリーや映画のシナリオを執筆。1965年にフリーランスへ転身し、本格的に劇作家の道へ。特に1960年代後期から、演出家の蜷川幸雄氏と組んで清新な作品を次々と送り出し、多くの支持を集めた。1994~2007年多摩美術大学教授。2002年紫綬褒章、2008年旭日小綬章受章。
清水邦夫公式サイトより https://kunioshimizu.net
<出演者>
ソン・オクスク(A)

1973年子役として映画デビュー。代表作として「冬のソナタ」があり、ペ・ヨンジュンの母親役を演じた。映画女優、ラジオDJとしても活躍している。その他出演作品に、ドラマ「善徳女王」「ベートーベン・ウィルス〜愛と情熱のシンフォニー」「ミッシングナイン」「いとしのソヨン」などがある。
ソ・ヨンヒ(B)

1998年MBC番組「警察庁の人々」に出演し、演劇「モスキート」で正式にデビュー。映画「無道理」で初主演を務めた。2008年 映画「追撃者」のミジン役で名を上げ、映画「キム·ボクナム殺人事件の顛末」でより広く知られる役者となった。その他出演作品に、映画「探偵なふたり」「7人の脱出」「7人の復活」「緑豆の花」などがある。
イ・イルファ(C)

1992年SBSタレントとしてデビュー。新人の頃、イ·ビョンホンと「風の息子」に出演。代表作品としては、ドラマ「野人時代」「いとしのソヨン」「星から来たあなた」「応答せよ」シリーズなどがある。
「応答せよ」シリーズではあたたかい母親役を演じた一方、「野王〜愛と欲望の果て〜」ではおしゃべりなおばさん役を、「星から来たあなた」ではセレブな奥様役を演じ、幅広い演技力を披露している。
ハム・ウンジョン(D ダブルキャスト)

1995年KBS1TV「新世代報告 大人たちはわからない」で子役としてデビュー。2009年アイドルグループ「T-ARA」として歌手デビュー。ドラマ「名家の娘ソヒ」、映画「マドレーヌ」、「静かな世界」など多数の作品に出演。その他出演作品に、ドラマ「ドリームハイ」「宮-Love in Palace」「プラハの恋人」ながある。
キム・ジュヨン(D ダブルキャスト)

2015年舞台 「タクシー・ドライバー」でデビュー。常に優れた演技力を披露し高い評価を得ている。出演作品として、舞台「テンプル」、ミュージカル「ヴァンパイア・アーサー」、ドラマ「海街チャチャチャ」などがある。
<概要>

出演:Aソン・オクスク/Bソ・ヨンヒ/Cイ・イルファ/Dハム・ウンジョン/キム・ジュヨン(ダブルキャスト)
公演日程:2025年6月24日(火)~6月29日(日) 全6公演
会場:博品館劇場 ( 〒104-8132 東京都中央区銀座8丁目8−11)
チケット代金:
特典付きSS席 13,500円(前方席/チェキ撮影&サイン入りポスター付き)
SS席 11,500円
・S席 7,500円
・A席 5,500円
主催: サンライズプロモーション東京/NHKエンタープライズ
企画制作:T2Nメディア
原作:清水邦夫
脚色:ユン・ソヒョン
演出:ユン・ソヒョン/シン・ギョンス
公式HP:https://gakuya.srptokyo.com/
公式Instagram:https://www.instagram.com/gakuya_2025/